のびしろと野心と

ジャニーズWESTさんのことや映画のこと。WESTさんののびしろと野心にほれ込みました。働く男はかっこいい。

『お嬢さん』がおもしろかったです

 

田園風景だらけの片田舎にある映画館なのですが、韓国映画『お嬢さん』がやってきたので見に行ってきました。R18指定。韓国ではR19。とにかくエロい。

本当は先月見た『哭声』の衝撃とか『葉問~継承~』のすばらしさとか下書きしていたんだけど形にならなかったのでそのままです

 

あらすじ:日本の統治下にあった1930年代の韓国。詐欺師たちの集団の手で育てられた少女スッキ(キム・テリ)は、伯爵の呼び名を持つ詐欺師(ハ・ジョンウ)から美しい富豪令嬢・秀子(キム・ミニ)のメイドという仕事をあてがわれる。スラム街から彼女とそのおじが暮らす豪邸に移ったスッキだが、伯爵は彼女の助けを得て秀子との財産目当ての結婚をしようと企んでいた。結婚した後に秀子を精神病院に送り込んで財産を奪う計画を進める伯爵だが……。 (yahoo映画情報より)

 

あらすじ読んでから行ったと思うんだけど、ぜんぜん頭に残ってなかった程度に、一見ありふれている。でも、これ超官能的。

 

出てくるのが『日本人になりたかった韓国人』『韓国で育てられた日本人』『日本語を使いこなす韓国人詐欺師』と、バックボーンが複合的すぎて、そりゃ一筋縄ではいかないよなと。

 

そういう演技(それっぽいエロス)ってやろうと思えばいくらでもやりすぎることってできると思うんですが、それを抑える「技」みたいなものがこれはあって。さすがパク・チャヌク監督。

主要な俳優陣は全部韓国人なんだけど、セリフの半分くらいが日本語。母国語ではない言葉で語らせることで、余計なニュアンスを加えた演技(それっぽいエロス)が省かれて、その抑圧というかフィルターが、官能を引き出しているような気がした。

実際、パンフレットの監督インタビューを読んだら、韓国人にとっても日本人にとってもおもしろくなる仕掛けとして計算されていたんだなと、なるほど監督の思惑通り。

 

日本建築と西洋建築がつながったお屋敷もおもしろい。

窓のない日の当たらない部屋で、照明の力でうかびあがる色彩の美というか。こもった空気や湿度まで官能的。明らかにからっとした美ではない。『ムーラン・ルージュ』とか『華麗なるギャッツビー』の衣装デザインでアカデミー賞取ったキャサリン・マーティン的なそれではなく、すすけた風景の中にある、上質な生地の質感や彩度の高い色って、なんともぐっときます。お金、かかってる。

 

インタビュで、監督が原作を読んで「活字で終わらせるのはもったいない」と映画化になったとあって。そういう自信と才能と資本が揃っているのが今の韓国なのかな。資本の面では韓国映画産業界の規模が大きくなったことに助けられた(意訳)と仰っているし。日本でそういう言葉は出るかな。むずかしそうだな。むしろクラウドファンディングで映画を撮るということが、わたしみたいな超ど素人にも認識のひとつになってるくらい。

優れてる劣ってるではなくて、たぶん環境が全然違うんだろうなと。

NHKの『アナザーストーリー』という番組で冬ソナについて考察している回があったんだけど、冬ソナの話にとどまらず、韓国のコンテンツ産業がどうしてこんなに伸びたかというところまでつっこんでいて、見ごたえがあった。

キム・デジュン大統領時代(90年代の終わり)に、政府主導で映像産業に力を入れて、法律を作ったり、大学を作ったり、制作会社への融資なんかも優遇したらしい。制作会社は一気に増えて、切磋琢磨する。それから20年弱、韓国のコンテンツ産業は本当に強いなあと思う。

見る側も鍛えられてるんだろうなと。日本だったら、視聴者置いてけぼりだろうっていうテンポや、わかりやすさに媚びない脚本、結構頭フル回転でみるようなドラマ、映画も多い。あと、役者さんが大学で演劇を学んだ人が多い印象がある。セオリーが頭に入っている方が、多いのかなと。日本はわりと「憑依型」みたいに言われる人が多いと思うのだけど。繰り返しますが良し悪しではなくて、隣の国だけど、本当にスタンスが違うなあということです。

 

まとまりませんね。全然。でも、先月は『哭声』今月は『お嬢さん』と濃厚な韓国映画をこんな田舎でも見られたので、脳が覚醒しました。ありがとうございます。